楕円関数
楕円関数とは、C : Y2 = X3 + AX + B とかけるもの。
ただし、4A3+27B2 < > 0 であるもの。
この条件は、Z = X3 + AX + B という3次関数が重解を持たない条件。
この条件があると、曲線は非特異になる。
つまり、C は、R1 の R2 への埋め込みになる。
さて、有理数体 Q 上での楕円関数の特徴を調べてみよう。
有理数体上ということは、係数 A,B も解も Q に含まれるという意味である。
まず、一般論として、 係数 A,B が Q の元であるという仮定のもとで、
曲線 C 上に2つの有理点 a,b をとると、a,b は以下の演算について加群をなすことを示そう。
まず、無限遠点を o と書く。このとき、c = a + b なるC上の点 c を以下のように定める。
C上の点 a, b を通る直線 l をひくと、は、C は3次関数だから l と3点で交わる。
x,y 以外の点を d とする。d は有理点になる。(A、Bが有理数だから。)
点 d を通り、y軸に平行な直線(つまり、dとoとを結ぶ直線)とCとの交点
のうち d 以外のものを c と定める。c も有理点になる。それは、d,o,A,B がQ の元であることから。
実は、c = -d つまり、c は d の x 軸に関する対称点になる。
これにより、+ を演算とする加群ができる。単位元は o、逆元は、x軸に対称な点で与えられる。
必要とあらば、以下をチェックせよ。
- a + o = a
- a + b = b + a
- a + (-a) = o となる点(-x)の存在
- (a + b) + c = a + (b + c)
4.については、一応証明しておく。
点 a, b を通る直線を l1、点 (a+b) , o を通る直線を m3、
l1 と m3 の交点を d
点 b, c を通る直線を m2、点 (b+c) , o を通る直線を l3、
m2 と l3 の交点を e とする。
(a + b),c を通る直線を l2、 a,(b+c) を通る直線を m1 とおくとき、
命題
l2 と C との交点のうち、(a+b), c 以外のものを u、
m1 と C との交点のうち、a, (a+b) 以外のものを v とすると、u=v になる。
証明
3次形式
a0 X3 + a1 Y3 + a2 Z3
+ a3 X2 Y + a4 Y2 Z + a5 Z2 X
+ a6 X Y2 + a7 Y Z2 + a8 Z X2
+ a9 XYZ
を考える。自由度は10次元ある。
もとの楕円関数の式を斉次化して
Y2 Z = X3 + A Z2 X + B Z3 とする。
F = X3 + A Z2 X + B Z3 - Y2 Z
とおけば、F=0 が楕円関数の方程式になる。
F=0 は、8点 a,b,c,o, (a+b), (b+c), d, e を通る。
ここで、一次独立な2つの3次形式、
F1 = l1・l2・l3
F2 = m1・m2・m3
を考えると、F1、F2も、上の8点 a,b,c,o, (a+b), (b+c), d, e を通るので、
この8点を通る任意の3次形式は
F = p F1 + q F2 (p,q : 定数)
という形でかける。つまり、元の楕円関数は、こういう形で F=0 と表されている。
このF は、F1 = 0 かつ F2 = 0 の点を必ず通るので、
C は、l2 と m1 との交点をとおる。
この点は、l2 とC との交点であり、かつ、m1 とC との交点でもある。よってu=v。
(証明終わり)
u=v だと、定義から、
(a+b)+c = ( u とo を結ぶ直線とCとの交点のうち、u,o 以外のもの)
a+(b+c) = ( v とo を結ぶ直線とCとの交点のうち、c,o 以外のもの)
となるので、
(a+b)+c = a+(b+c)
が得られる。以上から、C 上の有理点は加群をなすことが分かった。よって、以下Q上でC を考える。
Q 上の C の性質を調べるのに、p-進数体を定義する必要がある。
p-進数体
pを素数とする。任意のQの元 r に対して、p-進付値 |r|pを以下で定義する。
r= pn u/v
と表されるとき、 |r|p= p(-n)。また、|0|p=0 とする。
これが、絶対値の性質
- |r|p >= 0
- |rs|p = |r|p |s|p
- |r+s|p <= |r|p + |s|p
を満たしていることはチェックすること。
特に、|r+s|p= max{ |r|p, |s|p } である。
この|・|p に関してQ は完備ではない。
つまり、基本列(コーシー列)の収束先はQの元にはならない(ことがある)。
よって、|・|p に関してQを完備化したものをQp と書く。
4則演算に関してQp は体になる。
実際、Q の |・|p に関する基本列のうち、0に収束するものの集合をN
とおくと、N は極大イデアルであることが証明でき、Qp=Q/N
となる。Q が体で N が極大イデアルだから、Qp は体になる。
続きはいつか暇なときに書く予定。
なお、私の能力不足、時間不足から、間違ったことが書かれている場合もあります。
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