10月3日(木)



今日はセミナーの日ではなかったが、 午前中に大学に行くと佐藤君がいた。
「へえっ、毎日大学にきてるの?」
「ええ、だいたい。今日は図書館のバイトがありますから。」
端末に向かっていた私は、 佐藤君のホームページを開いた。
「佐藤君ってテニスやるの?」
ホームページの情報をもとに聞いてみる。
「ええ。」
「こんどからセミナー終わったらテニスやるってことにしようよ。 でも、この近所にコートってある?」
「駒場野公園のコートは予約制だし、サークルでもなかなかあたらないですよ。 でも、午前中とかはすいているかもしれない。」

何気ない会話のうちに時は流れ、12時半になった。すると、佐藤君は
「じゃあ、僕授業がありますから。」
さすがは佐藤君。真面目だ。
「何の授業?」
「森田先生の。」
「何やるの?」
「マッピングクラスグループとか。」
「へえっ。出ようかな。」
といいつつ、野暮用で授業には出れなかった。

午後1時位になって、 石川君が入ってきた。 お弁当を片手に持っていた。午前中から大学にいた私は たいへんお腹がすいていた。
「こんにちは。岩井さん、大学に来てるんですか。セミナー以外の日に 大学で初めて見ました。」

失礼な奴だ。

「お弁当、俺の分はないの?
「まさか岩井さんがいるなんて思わないですから、 買ってくるわけ無いじゃないですか。」

冷たい奴だ。

「じゃあ、そのお弁当俺に売ってよ。」
「まさかそんなことまでしませんよ。」

なんて奴だ。

「どうしてお弁当を買う前に一度院生室に来ないの。」
「だって、太田屋は駅からここまでの通り道ですから。」

石川君はうそつきだ。 駅から院生室までの測地線上には太田屋は無い。

「授業出ないの?」
「えっ、授業って始まってるんですか。」
もう10月だ。当然始まっている。
「佐藤君は行っちゃったよ。」
「何の授業ですか?」
「森田先生の。」
「何やるんですか?」
「マッピングクラスグループとか。」

そうこうしているうちに2時になった。私は用事があるので帰ろうとしていた。
「じゃあ、またね。」
「どうもすいませんでした。」
と石川君。お弁当を買ってこなかったことを反省しているよ うだったので、 これ以上責めるのはやめておこう。


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